面会制限に関する重要な論文。面会制限に関する研究のレビューが行われて、その結果が紹介されている。その結果、面会制限の有効性に関する科学的エビデンスはないという。科学的かつ倫理的に考察された総説。オープンアクセス論文で下記URLからダウンロードできます。

Lessons from COVID-19 patient visitation restrictions: six considerations to help develop ethical patient visitor policies

6つの提言論文.pdf

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日本語要約

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1.はじめに

上気道ウイルスの感染伝播に有効な方策のエビデンスは弱い。面会制限のみの有効性を分析したものはない。 小児病院集中治療室では幼児と感染症状のある人に限定して制限して感染防止ができたが、最近のコロナの研究では面会制限を緩和しても院内感染の増加はなかった(Wee、2021)。 RCT研究で面会時間を12h/dから1.5h/dに減らしても感染の減少を見いだせなかった。同じ研究では家族の不安と抑うつが増加している(Rosa、2019)。他の研究では、面会を緩和すると微生物汚染率は高くなるが、それに伴う感染性合併症の増加はない・・・等々。

理屈上は面会制限が感染リスクを減らすように見えるが、実証はされず、患者の転機がかえって悪化することが指摘されている。

2.コロナ禍での面会制限

コロナ禍ではCDCの患者の精神的幸福に配慮するようとの勧告にもかかわらず厳しい面会制限が行われ、患者は孤独死した。

当時の個別病院の方針は記録が残っていない。かろうじて報道ではこれらの強制が患者や家族に与えた苦しみが今も報道され続けている。

3.面会制限に関する考慮事項

医療は面会制限をより大きな利益のために避けられなかった現実であると受け入れた。しかしこの譲歩は、エビデンスが提起する倫理的問題や社会的・個人的影響を無視している。

面会制限に関する6つの提言

(1)厳格な面会制限が感染対策に有効であるというエビデンスはない 論文レビューでは面会制限のメリットはなく、逆に多くの悪影響が指摘されている。患者への悪影響は、疼痛の増強、食事量の低下、うつや孤独感がある。家族への影響は、不安となり、家族関係が乱れ、新生児との絆が弱まる指摘がある。 医療従事者も、倫理的なジレンマ、リモート面会の偏重、家族や精神的なサポートを欠く患者の健康状態の悪化によりかえってストレスに直面する。 面会制限は、急激な健康状態の変化に気づく家族が傍にいないことで患者にデメリットがあり、かえって感染致死率(IFR)を増加させる可能性がある。特に現在ではほぼ全員が少なくとも一度はコロナに感染していることを考えると、厳格な面会制限は悲惨な結果となる。

たとえRCTで感染リスクを下げるデータが得られても、倫理的な観点も踏まえて検討されるべきである。面会制限によりメリットがあることが確認されたとしても、出産や生死という人生の重要な局面で、患者を独りにする価値があるだろうか?

(2)他の患者の利益になる可能性があるからといって、ある患者に危害を加えることは、基本的な医療倫理に反する。

第三者が利益を得る可能性が十分に立証されていない場合、そのような行為を正当化することはさらに難しい。

(3)コロナ禍の最中に病院管理者が決めた方針は視野が狭く厳格すぎる。